グラフィックデザイン学科Department of Graphic Design

[優秀賞]
藤田航大|境界に立ち。
宮城県出身
近藤一弥ゼミ
B4

動物たちが自分のテリトリーを守ろうとするように、私たち人間は土地をめぐり様々な争いを繰り返してきました。つまりそれは本能的なものなのです。日本でも土地の境界線は時代と共に変化し、その歴史を物語とともに人々、文化、言葉、そして大地に刻んできました。この写真集では青森県から滋賀県までの令制国、藩、郡、都道府県の境界とその周辺の集落や街の写真を集めています。土地土地の物語と共にお楽しみください。


近藤一弥 教授 評
藤田君は、もともと写真、鉄道、歴史のオタクだったようです。 彼の作品のテーマは「境界」です。考えてみれば、土地にまつわる境界の問題は、隣人から国家に至るまで、古くから紛争の火種となってきました。歴史は境界によって押し進められた、と言えるかもしれません。また、明治時代に発電所が作られた時から、東日本と西日本では電気の周波数が違います。しかしそのことに疑問の余地なく鉄道は走り続けています。藤田君はそんな現実を眼で確かめるべく、時間を見つけては一眼レフ片手に旅に出て写真に収めました。当然のことですが、地図に見えるような境界線がそこに引かれているわけではありません。写真集の巻末にはそれぞれの場所についての解説がありますが、境界線は人が決めた言葉の線なのかもしれません。その線は一体どこまで続くのか、近づいていくとその線の本当の境目はどこにあるのか、次々と疑問が湧いてきます。