美術科 版画コースDepartment of Fine Arts Printmaking

[最優秀賞]
原田綾乃|一本の線が集まり面になり、空間へ繋がる/イメージ
H870×W600mm 8点/H297×W210mm 4点、H290×W150mm1点、H260×W220mm 1点、H250×W170mm 1点 手漉き紙、カーボランダム、銅版画(エッチング/アクアチント)

山は一枚の葉からできていると感じる。声は一つの音からできているように感じる。このような感覚を可視化することが制作の動機である。この動機から、紙の厚みや版のざらつきなど、感触を確認しながら制作している。手の痕跡がものに残る。ものがあるから手の痕跡が残る。このような各対象の関係性により、私の作品は成立している。今回の作品では、「紙と版」の関係を探ることを制作の軸とした。


若月 公平 教授 評
原田綾乃さんの作品は、主題(テーマ)と方法(技法)がとてもダイナミックに関連付けられて表現されたものとして授賞することとしました。
「自然」を主題に、見る対象としてだけでなく自身が抱かれる山や森を体感的に表現することを目的とし、自身が漉いた紙に銅版画で刷った作品です。素材として分解された樹木の繊維を水中にほぐし自身の手を通して、ある意味戯れながら原版を印刷する紙として再生させる。その時間が「自然」と触れている実感があると作者が語ります。また、その紙で刷る銅版も腐食という自然現象に委ね、銅という素材が変化し作者自身のイメージが刻印されてゆく。そして、紙と銅版を何回も刷り重ねるとき、それぞれの素材が生き物のように変容し、作者の行為と精神が一体となったものが出現します。その8枚の作品を並べ少し離れて観たとき、そこに広がるのは、あたかも深い森の中に迷い込んだような空間で、そこに佇む私達は大きな自然に包まれる錯覚を呼び起こすような作品です。