建築?環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]

大室新|言葉から生まれる空間 ?歌集「木のかをり」から読み解く情景の空間化?
山形県出身
山畑信博ゼミ  
バルサ材、黄ボール、スチレンボード、スタイロフォーム

私の祖父は家業の製材業を営む傍、若い頃から歌人として多くの歌を歌い続けてきた。しかし、時代が進み変化が年々加速することによって、祖父の歌集は作品としての外形を残しながらも、多くの美しい情景が過去の物として消化されている。そこで、歌集の情景に経験知の不足を感性で補うための想像活動を刺激する実空間を与えることで失われた過去の情景から、新たな心象風景が生まれていく建築を提案する。



山畑 信博 教授 評
大室さんの作品は、今山形で注目されている広葉樹を主体とした製材所にアトリエとギャラリーを併設し、地域の人たちが気軽に訪れて木材を間近に感じることのできる施設を設計したものである。この作品の優れているところは、単に必要な機能空間を構成したというものではなく、製材業を営んでいた祖父が遺した歌集「木のかをり」から、製材所の風土や歴史、継承される暗黙知を分析?考察し、短歌の潜在知および情景価値を再解釈することによって、建築の空間を導いているところにある。この木材に携わる古くから共有されてきた山形の風景や知識を、短歌の階層、句の階層、単語の階層に分けて暗黙知を分析?考察した結果だけでもひとつの論文として十分に通用するものである。そこから短歌に含まれるメタファーやアナロジーを抽出して形態?空間化する作業を行い、設計に至っている。彼の精緻な分析力と模型製作?プレゼンテーション能力を十分に発揮した秀作である。